菌類講座

2012-3-4

菌類のふしぎと他の生物との関わり合い

2012-3-4の公開シンポジウム

メモ

クロマツと一緒に生活するきのこ「ショウロ」栽培

クロマツの外生菌根菌アミタケ・ハツタケ・ヌメリイグチ・シモコシ・ショウロなど

ショウロ 味は淡泊、リンゴのような食感。

クロマツに効率よく安価にショウロ菌を感染させる「新たな感染技術」を開発。

人工的にショウロ菌を共生させた苗木を用いる人工栽培。

菌根共生のしくみ

樹木(クロマツ)光合成 きのこ(ショウロ)

樹木(クロマツリン・水分きのこ(ショウロ)

 

きのこ栽培の悩みの解決を目指す!

栽培施設栽培棚・栽培ビン

栽培ビンからきのこが発生。きのこから胞子が飛散。胞子の付着による換気扇の汚濁。

飛散する胞子を吸引し、アレルギー性の肺疾患(きのこ肺)を発症。過敏性肺炎

対策:換気扇・清掃・マスク

最も有効な解決策は胞子を作らない(無胞子性)品種の栽培

無胞子性きのこの開発突然変異に期待

「自然に生じた突然変異体」や「紫外線を菌糸細胞に当てて
人工的に作り出した突然変異体」の中から、栽培に使えそうな変異体を探す。


胞子・プロトプラスト・菌糸体片殺菌灯を用いた紫外線照射生存株を分離。

(注)プロトプラスト細胞壁を有する生物において細胞壁溶解酵素などで細胞壁を分解した細胞のこと。

エリンギのプロトプラストに紫外線照射を行うことによって担子胞子形成欠損変異株の突然変異体の作出。

日本:エリンギ・ヤナギマツタケ(品種登録)

ヨーロッパ:ヒラタケ(大手種菌メーカーが権利をもつ)



「分解者」としてのきのこは「生産者」になれるのか?

きのこにはリグニンセルロースを分解する能力がある。

きのこのリグニンを分解する能力製紙のパルプ化を行う際の「漂白」工程や残留農薬・ダイオキシンなどの有害物質の分解などに利用。

フェノキシ系除草剤の分解カワラタケでは38.3%の分解率

エタノール発酵酵母菌を用いるがデンプンやセルロース系バイオマスといった高分子を分解・発酵できない。

デンプンやセルロースを糖化するのにきのこを利用。

農産廃棄物(稲ワラ、麦ワラ、トウモロコシの茎や芯、雑草、竹材、間伐材・建築廃材など)から

有用物質(エタノールなど)を生産できるきのこを育てる研究。

リグニンの分解

フェノール酸化酵素:リグニン分解酵素1-3

1 マンガンペルオキシダーゼ

2 リグニンペルオキシダーゼ

3 ラッカーゼ

 

セルロースの分解

セルロースセロオリゴ糖セロビオースグルコース

(注)セロビオースセルロースをセルラーゼで分解すると生じる。オリゴ糖の一種。二糖類。

 

ピルビン酸アセトアルデヒドエタノール(アルコール脱水素酵素)アセトアルデヒド

TCAサイクル

ブドウ糖(解糖)ピルビン酸乳酸

発酵と分解

ピルビン酸<発酵>ピルビン酸脱炭酸酵素アセトアルデヒド

アセトアルデヒド<分解>アセトアルデヒド脱水素酵素酢酸(アセチルーCoA)

 


光合成をしない植物(菌従属栄養植物)の菌根共生

菌根共生

植物光合成産物(炭素化合物)菌類

植物土中の養分(窒素・リン酸など)菌類

 

緑色の葉を持たないラン科などの植物:菌従属栄養植物(以前は腐生植物と呼ばれていた)

植物土中の養分(窒素・リン酸など)菌類

菌従属栄養植物:ラン科、ツツジ科、ホンゴウソウ科、サクライソウ科、ヒナノシャクジョウ科、リンドウ科など。

 

外生菌根マツ科、ブナ科、カバノキ科などの樹木に形成される

キンランーイボタケ科

ムヨウランーベニタケ科

トラキチランーアセタケ科

ツチアケビーナラタケ属

タシロランーナヨタケ科

タシロランより分離培養した菌根菌ME1-1について子実体観察による同定。

ME1-1イヌセンボンタケと同定された。

(注)イヌセンボンタケ最近、ラン科植物タシロランの共生菌根菌として分離されている。

ムヨウラン(無葉ラン)属ーベニタケ科ベニタケ属・チチタケ属(3つのグループ)

オオバノトンボソウの菌根共生

菌根菌の多くはCeratobasidiaceae(ツノタンシキン科)


菌糸コイル

ラン型菌根では皮層細胞内に菌糸コイルを形成する。この菌糸コイルは一定期間を経ると、植物に分解吸収される。

 

炭素、チッソの同位体分別

光合成植物のδ(デルタ)13C(炭素)値は低い。

菌類のδ(デルタ)13C値は高い。

外生菌根菌δ(デルタ)15N(窒素)値は高い。

(注)同位体分別同位体比が変わること

 アーバスキュラー菌根(かつてはVA菌根菌と呼ばれていた)多くの陸上植物の根に形成される菌根。

サクライソウ

?塩基配列の相関性は高かった

シャクジョウソウキシメジ属

ギンリョウソウモドキベニタケ科

ギンリョウソウベニタケ科

アキノギンリョウソウベニタケ科

(注)シャクジョウソウはマツタケ などのキシメジ科の菌に寄生する。




昆虫に栽培される菌類の生態

菌類と昆虫の共生

昆虫が菌類を栽培する養菌性

昆虫と共生する菌類は、宿主のマイカンギア(mycangia)と呼ばれる器官によって運搬される。

キクイムシではマイカンギア(mycangia)の構造が種によって異なる。

最近、マイカンギア(mycangia)の共生菌が盗まれていることが発見された。

盗人キクイムシ種(養菌窃盗性キクイムシではマイカンギア(mycangia)が退化。

 

アンブロシア(ambrosia):昆虫飼育菌類

ambrosia…不老不死の食べ物 〜ギリシア神話

アンブロシアビートル(養菌性昆虫)はアンブロシア(ambrosia)菌を食べて生活する。

クスノオオキクイムシ

クビナガキバチ

シキミタマバエ

(注)アンブロシアビートル体の一部に菌を貯蔵するためのくぼみを持っており、その中に餌となる菌類が入っている。

 

里山の生態系変化の中での菌類

江戸末期、大阪で人々が生活をするための燃料は瀬戸内の各地から供給されていた。

土佐・紀伊・瀬戸内一円大阪の薪炭

西日本の山の木々は伐採され薪炭として売られていた。

アカマツと共生マツタケ・コウタケ大量発生

若いアカマツ林ハツタケ・ヌメリイグチ

ナラ林ショウゲンジ・ネズミタケ

戦後、プロパンガスの普及が森を大きく変えた。はげ山に近い状態であった近畿の里山はゆっくりと木々に覆われた。その結果、林の下には落葉層が形成。

落葉分解菌・ベニタケ、チチタケ属の増加。フウセンタケ属の増加

マツノザイセンチュウによる松枯れ

ヒトクチタケ・チャツムタケ・フサヒメホウキタケ・ツガサルノコシカケ増加

松と共生する菌根菌の衰退マツタケ・ホンシメジ・ホウキタケ減少。

ヌメリイグチ、オウギタケの減少。

アカマツ林のみの小さなコナラ菌類相チョウジチチタケに限られていた。


ナラ枯れ

ナラだけでなくシイ林も枯れ始めている。

枯れ木に生える食用菌の増加(マイタケ・ナラタケ・エノキタケなど)

カエンタケの増加


与謝野晶子「たけ狩り」 堺でのまつたけ狩り

浜寺小学校区今昔物語 キシメジ?(シモコシ)







2012-1-22

菌類生態学講座きのこ偏

メモ

講演 F氏「木材腐朽と菌類

枯死木(こしぼく)がなければ1/5以上の動物種が消え去る

 

生物間相互作用

多様で複雑なほど安定 Rooney

枯死木(こしぼく)が生態系の安定性にはたす重要性

枯死木(こしぼく)の適切な取扱い

 

枯死木(こしぼく)の分解

褐色腐朽分解困難なリグニンを残す、ブロック状に崩れやすい マツタケ

白色腐朽リグニンを分解しセルロースを残す、繊維状 チリメンタケ

軟腐朽泥腐れ

 

倒木の分解段階

ナイフの刺さる深さ、クラス15、PH低下

αナフトール試薬による反応(リグニンの分解)

 

優先種の発生頻度(辺材)

ヒトクチタケ ヒメシワタケ(褐色腐朽菌)

シハイタケ コメハリタケ(褐色腐朽菌)

クヌギタケ属 ヒメオツネンタケ

ヒメカバイロタケ ブドウタケ

優先種の発生頻度(心材)

シハイタケ ヒメシワタケ(褐色腐朽菌)

ヒメカバイロタケ マツオウジ(褐色腐朽菌)

シハイタケ、ヒメカバイロタケ白色腐朽菌

ヒメシワタケ、マツオウジ褐色腐朽菌

倒木上への実生(みしょう)の定着

褐色腐朽リョウブ

 

変形菌

胞子アメーバ変形体子実体胞子

原生動物

倒木の分解

クラス1…トビゲウツボホコリ

褐色腐朽(PH小)白色腐朽(PH大)

フシアミホコリエダナシツノホコリ・ツノホコリ

 

コケと実生(みしょう)

トサカゴケ

イトハイゴケ(糸這蘚)含水率と関係する

コモチイトゴケ  含水率と関係する

ナガハシゴケ

シシゴケ

シハイタケ白色腐朽エダナシツノホコリ・ツノホコリ

 

心材 褐色腐朽フシアミホコリ ナガハシゴケ

辺材 白色腐朽ツノホコリ コモチイトゴケ







講演2 I氏「アンモニア菌

 

暖温帯照葉樹林(常緑広葉樹林)シイ・カシ

 師匠S氏から得たもの

山を一つの生き物としてみなさい(お師匠のお師匠:H氏) 

尿素施与による0.5uにきのこが300本以上

 

菌根菌 

個体→個体群→群集

菌鞘(きんしょう) 外生菌根

 

菌根性のアンモニア菌

アカヒダワカフサタケモドキ

アカヒダワカフサタケ

アシナガヌメリ

ナガエノスギタケダマシ

オオキツネタケ

ウラムラサキ(アンモニア菌!)

 

腐生性

イバリシメジ 担子菌(小型)

コジイと共生 菌鞘(きんしょう)構造

 

PCR-RFLP法による菌根の同定と定量

RFLP法…土の中の菌糸のDNAから種を推定する方法 DNA分析

 

優先的な種

コジイ林(照葉樹林) アカヒダワカフサタケモドキ 菌根数50% 子実体の乾重91

コナラ林(落葉広葉樹林) アカヒダワカフサタケ 菌根数15% 子実体の乾重89

 

不完全菌Cenococcum geophilumの菌根量の追跡






2012-1-21

菌類生態学講座変形菌偏

メモ

2012.1.21 

講演1 F氏「木材腐朽と変形菌

 

変形菌 原生動物

胞子アメーバ変形体子実体胞子

変形菌真菌細菌食者

線虫トビムシダニ

変形体がキノコを食べる

 モジホコリ、フウセンホコリ属

(サラモジホコリはキクラゲ類を好んで食べる)

アメーバの餌には大腸菌を用いる

モジホコリ属、ムラサキホコリの変形体はデンプンを分解できる。

 

枯死木(こしぼく)の分解

パルサンモミ150年以上

養分増加、リグニン蓄積 PH低下

木材 ブナ(ホロセルロース、リグニン25% その他)

ホロセルロースリグニンを除去したセルロース

ヘミセルロース、セルロース

 

分解力

 

リグニン

ホロセルロース

低分子

担子菌

 

子のう菌

接合菌

 

白色腐朽

褐色腐朽 リグニン ブロック状に崩れる

軟腐朽 子のう菌による

木材の腐朽度合ときのこ

ヒトクチタケ、シハイタケ

ヒメシワタケ

コメハリタケ、ブドウタケ

マツオウジ、ヒメカバイロタケ

ヒメオツネンタケ、クヌギタケ属

 

 

トビゲウツボホコリ、ヒトクチタケ

エダナシツノホコリ

シハイタケ、マメホコリ

 

褐色腐朽 フシアミホコリ

白色腐朽 エダナシツノホコリ 5.36PH ツノホコリ5.55PH

 

ヒトクチタケトビゲウツボホコリ

被食?

シハイタケマメホコリ

 

木材の構成

 リグニン 基本単位に分解 難分解性






講演2 S氏「変形菌子実体をめぐる甲虫群集

 

変形菌

菌界 胞子を作る 

真核生物

変形菌と虫 ヒメキノコムシ科

すべての種が粘菌類をホストとする特異な食性をもっている

ヒメキノコムシ類は、変形菌子実体に産卵し、ふ化した幼虫は胞子のみを食べて育つ変形菌食に特化した甲虫

 キノコバエ ハネカクシ

変形菌と甲虫

ヒメキノコムシ

デオキノコムシ類が優占

 クリイロヒメキノコムシ 多… ススホコリ、ムラサキホコリ

マルヒメキノコムシ 少… ツノホコリ、アミホコリ、ウツボホコリ、マメホコリ

フンホコリ、クダホコリ、ムラサキホコリ、ススホコリ

ホテイケシデオキノコムシ


2011年1月23日、

大阪市立自然史博物館の「菌類生態学講座」

Memo


地域の菌類リストを作る」MK氏

参考文献 大和民俗公園のキノコ相について



 大和民俗公園(93年調査)では、

キノコ確認種数は7月と10月にピーク。

 マツタケは、一般的に地下の菌糸が12〜19の範囲に一定時間さらされることが子実体形成のきっかけとなっている。



 大和民俗公園(93年調査)では、
イッポンシメジ科などについては、二次林でしか確認されていない。

イグチ科やテングタケ科、ヒラタケ科の多くも二次林区で見られたこと。

(イグチ科やテングタケ科のキノコの大部分は菌根菌。コナラ・アカマツなどの菌根をつくる樹木が多いためか?)

逆に、ベニタケ科やフウセンタケ科の種数はあまり変わらない。
(二次林区、公園植樹区ともほぼ同等数。)

公園植樹区で見られた地上生のキノコの多くに広い範囲にわたって群生する傾向が見られた。

(落葉や下草を人が手入れをするために、広範囲で一様な環境ができる。そのためか?)




 

キノコの分布図から森林を探る」MY氏

参考文献 「森林における外生菌根菌の群集構造」

菌根菌は一年中、土の中に生息しており、多くの種類の菌が数cm程度の非常に狭い範囲で複雑に入りこんで分布しているのである。

オニイグチモドキの子実体直下では、オニイグチモドキが形成する菌根の数は相対的に少なく、別の菌によって形成された菌根が優占する。

それに対してベニタケ属の一種の場合、子実体直下では、この菌の作る菌根が優占する。

菌根菌の菌糸による樹木間の連結は、同一樹種内や異なる樹種間においても報告されている。(Miller&Allen1992

植物にとって菌根を維持することは、必ずしもメリットばかりではなく、光合成によって得られる純生産量の約15%が菌根に利用されていると推定されている。

(Vogt et al.1982)





長期の観測から変化を探る」S氏

参考文献 いのちの森(京都駅近辺に19964月につくられた都市における復元型ビオトープ)報告書



いのちの森では、マントカラカサタケとササクレヒトヨタケの発生子実体の減少は
土壌中の栄養分の減少によると考えられる。

いのちの森では、チチアワタケとヌメリイグチが隔年で発生することが多く、
チチアワタケがヌメリイグチより1〜3週ほど早く発生した。

ヌメリイグチとチチアワタケが発生しなかったのは、気象の影響よりも共生相手であるアカマツに原因があると考えられる。

移植初期にキツネタケ属、アセタケ属、ワカフサタケ属が多く発生し、

その後、年数が経つとテングタケ属、ベニタケ属が発生する。

(Ford
ら,1980;Last,1984a,b;Mason,1984)

いのちの森では、アセタケ属、キツネタケ属、ワカフサタケ属、ベニタケ属、ヌメリイグチ属が1998年から発生し、1999年からアセタケ属が増加し、フウセンタケ属も発生し始めた。
2000
年、2001年には更にフウセンタケ属、ベニタケ属が多く発生した。